患者さんへのインタビュー
患者さんへのインタビューは、患者さんの経験や視点について理解を得るための最も有効な手段です。直接の対話を通じて、研究者は患者さんの治療の道のりに関する定性的なインサイトを得ることができます。これには直面する課題、治療決定プロセス、特定の治療結果や治療オプションに対する好みなどが含まれます。インタビューは患者さんの視点を深く探求する機会を提供し、アンケートだけでは捉えられない貴重なインサイトを明らかにする可能性があります。たとえば、患者さんが新しく承認された医薬品を使用していないことは、処方データや調査からわかりますが、服用に関する問題の原因や最も適切な対処方法を理解するには、個々の患者さんからの定性的フィードバックが不可欠です。
市場の競争が激化する昨今において、価値の主張論はより具体的でなければなりません。早期開発における患者さんとの対話は、治療法のターゲット層や競争上の位置付けを明確化し、新製品を差別化する上でますます重要になっていきます。たとえばある治験依頼者は、希少疾患用医薬品の新しい経口製剤が承認されれば、間違いなく市場シェアの大部分を占めると想定していました。しかし、患者さんとの対話を通じて、売上予測を達成するには有効性と安全性の向上が必要であることがわかりました。その結果、開発プログラムを改良して、投与経路の改善に加え、患者さんにとって有意義な臨床効果を実証できるデータパッケージを構築しました。
調査
調査は多くの患者さんや医師を対象に実施することで、グループごとに異なる目標を設定して、患者人口統計、治療パターン、転帰に関する定量的情報を得ることができます。患者さんが毎日の疾患の負担や生活の質 (QOL) に影響を与える要因を強く実感している一方で、医師は概してデータ主導型の評価項目を重視しています。
医薬品開発企業が患者さんのニーズと期待を定性的に深く理解していれば、調査では患者集団のカテゴリー化、患者さんの嗜好に関する仮説、商業的予測を補強することができます。弊社はさまざまな地域や治療現場の収益予測を精緻化するために、患者調査を頻繁に実施します。特に総合病院と個人病院で患者さんの治療目標が異なる場合は、こうした調査を行います。
主要なオピニオンリーダーである医師へのインタビュー
主要なオピニオンリーダーである医師へのインタビュー は、パイプライン治療や新しい診断によって患者集団がどのように変化するかを理解するうえで貴重です。これらの医師は、将来の医薬品承認による治療法の進化の可能性に強い関心を抱いています。そのため、こうした医師との対話は、製品開発のあらゆる段階において有用です。急速に変化する状況において将来の製品が適合する場所、治験参加者の募集方法、最近の開発の商業的影響などを理解するのに役立ちます。
患者支援団体
患者支援団体は、メーカーや規制当局を含む広範なステークホルダーに、患者さんの関心やニーズを代弁するという重要な役割を果たします。こうした団体と関わることで、患者さんの経験に関する貴重なインサイトが得られ、研究開発の取り組みを具体化するのに役立ちます。患者支援団体は特定の症状について豊富な知識を持ち、患者さんの声を集約することができます。
もちろん場合によっては (特に希少疾患の場合)、関心を持つ多くのバイオファーマ企業に対して、患者支援団体のリソースが限られていることがあります。こうした状況では説得力ある価値の主張によって患者支援団体と対話し、それを繰り返す中でさらに改善していくことが重要です。治験参加者の獲得競争は熾烈になる場合があるため、患者コミュニティで早いうちに関心を高めておくことで、患者さんの募集をより効果的に行い、初期や後期段階の臨床試験を迅速に進められるようになります。希少疾患を対象とする多くの患者支援団体は、治験対象の患者集団へのアクセスを改善し、規制上のアクセスと商業利用に対する支援を確立するのに最適な立場にあります。
また患者支援団体は、患者アクセスの確保に州政府の資金提供が不可欠であるHIV/AIDSなどの市場アクセスを実現するうえでも、強力な役割を果たします。HIV治療法の開発に携わる企業として、弊社は患者さんのニーズと視点を理解するため、各国の患者支援団体の責任者にインタビューを行いました。このフィードバックは、治療計画や予防計画で患者さんが求める製品特質を理解するうえで不可欠でした。特にHIV治療の効果が高まり、患者管理が慢性化するにつれて、長期的な毒性プロファイルと副作用のプロファイルは想定以上に重要になってきました。そしてこの情報は、弊社が推奨するレジメンにおける製品の最適な組み合わせに重大な影響を及ぼしました。また、このインタビューは、新規の配合剤が地域の資金提供に適合するうえで非常に役立ち、患者コミュニティ全体が確実にアクセスできるようになりました。